成田エクスプレスの特急料金に対する特例(令和6年3月15日以前)
- あ
- 2024年9月1日
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【用語の定義】
規第125条第1項ロ(イ)hに定められる特急料金(成田エクスプレス以外のJR東日本の着席サービスが行われている特急列車の特急料金)…スワロー料金
規第70条第1項に定める太線区間…電車大環状線
【注意】
本記事の料金はすべて通常期の料金となっている.
成田エクスプレスの特急料金は,区間にかかわらずA特急料金を適用する[1][2]時点で例外だが,山手線内を四ツ谷・両国経由ではなく,品川・馬喰町経由でう回運転する影響で,さらに料金の計算方にイレギュラーが生じている.規則の制度設計とその必要性について書いていく.また規第125条第2項により指定席特急券と未指定特急券の金額は同額なので,料金に関しては区別する必要はない.
1. 規第70条による四ツ谷・両国経由での計算
規第67条により,「旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によって計算する。」のが原則であるが,例外もある.規70条の適用は,乗車券では珍しい話ではないものの,八王子発の成田エクスプレスの場合,特急券にも適用されることがある[3] .
四ツ谷・両国経由と品川・馬喰町経由の吉祥寺~成田空港の営業キロはそれぞれ以下の通りだ.
四ツ谷・両国経由 98.6km
品川・馬喰町経由 108.8km
料金設定は以下の通りであり,四ツ谷・両国経由で料金計算されていることがわかる.
営業キロ | 51km~100km | 101km~150km |
料金 | 1,730円 | 2,390円 |
2. 規70条の2第1項第2号[4]による四ツ谷・両国経由での計算
規第70条は電車大環状線を通過するときのみ適用するが,そうでない場合も最短経路で計算し,同規定との整合性を取るために,電車大環状線内を発着駅とする場合であっても,四ツ谷・両国経由で計算する.また,規第70条の2第2項により,乗車券の運賃計算も短いほうの経路で行い,基第154条第1項[5]によりう回乗車できるとあるが,そもそも同第1項第1号及び第2号に定める区間においては,規第160条第1項によりう回乗車が認められているので,規定が重なっている状態になっている.
四ツ谷・両国経由と品川・馬喰町経由の千葉~新宿の営業キロはそれぞれ以下の通りだ.
四ツ谷・両国経由 46.4km
品川・馬喰町経由 56.6km
料金設定は以下の通りであり,四ツ谷・両国経由で料金計算されていることがわかる.
営業キロ | 1km~50km | 51km~100km |
料金 | 1,290円 | 1,730円 |
3. 規第125条第1項第1号ロ(イ)iに定める特定の特急料金
この区間のみは計算経路が補正されるのではなく,特定の特急料金が設けられている.渋谷の位置関係上,最短経路は四ツ谷・両国経由であるが,計算経路を補正すると,走行経路を逆走してしまう影響で,規第70条の2第1項第2号を適用する新宿よりも計算に用いるキロ数が長くなってしまう.このキロ数がちょうど料金が変わる狭間に来る千葉がもう一方の発着駅になる場合のみ,料金が安くなるような逆転現象が生じないように料金を特定している[6].
走行経路のキロ数は53.2kmなのにもかかわらず,同規定に定められる通常期の特定の特急料金1,290円が適用されていることがわかる.
【注釈】
[1] 令和3年5月27日改正の規第57条の3では,具体的な区間を列挙した後に「特別急行列車成田エクスプレス号及びE261系車両で運転する特別急行列車に乗車する場合を除く。」と記されている.
[2] 令和6年3月16日から空港第2ビル,成田空港発着以外はスワロー料金に改定(減額)された.空港需要だけでなく通勤需要も拾うためと思われる.また規則上では,いわゆるB特急に含まないので原則に戻りA特急扱いとしていたものを,規別表第1号の2第1項に発着駅を制限したうえで組み込み,他のスワロー料金を適用する特急列車と同様に規第57条の3 第2項第8号を特定の特急券の発売根拠,さらに規125条第1項ロ(イ)h(a)および(b)を料金根拠として運用している.
[3] 令和6年ダイヤ改正より八王子発着の成田エクスプレスは廃止されたため,規70条を適用して料金の計算経路が変わる例は,湘南新宿ラインを走る普通列車に対する自由席特別車両券(B)しか存在しないうえ,この例も列車を指定して発売するものではなく,上野東京ライン経由のものと同じなので,券面で特にわかるものではない.また,大船始発の成田エクスプレスや千葉始発のあずさも電車大環状線を通過するものの,走行経路と最短経路が同じだ.
[4] 列車特定区間ともいわれる.
[5] 令和6年4月1日改正により,規第160条の7に同内容が組み込まれた.ただし不足していた内容が追加されただけだ.
[6] 令和6年ダイヤ改正後に,列車内で発売した特急券の過収受が9件発生した.この特定の特急料金を適用せずに発売したため.
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